【冊子名】 都政新報
【発行元】 株式会社 都政新報社
【発行日】 2008年8月15日
「新宿山吹高校」 復活へ向けて都立新宿山吹高校は、1991年4月に開校した都立初の単位制・無学年制の高校。昼夜間開校の定時制課程 (普通科、情報科) と通信制課程を併設するユニークな学校として全国的に知られ、多くの受験生が殺到した。しかし近年はその人気にかげりが見え、競争率も低下の一途を辿っている。その原因はどこにあるのか、また人気校へ復活する糸口は何なのか。今年度から同校の副校長に就任した大川登喜彦さん、同校の本来の魅力を訴えるNPO法人教育支援協会連合会東京支部理事の杉浦孝宣さん、同校の卒業生で現在は小学校教諭を務める廣田就子さんの3人に話し合ってもらった。 (文申敬称略)
杉浦 新宿山吹高校の入試倍率は近年凋落しています。原因はさまざま考えられますが、私はその一つに、偏差値58という数値がいまだに独り歩きしていることもあると思います。
大川 そうですね。実際に今はそこまでないので、その数値を見て敬遠されている可能性は大いにあるでしょうね。
杉浦 とくに不登校を経験した生徒は学力に不安を覚え、どうしてもチャレンジスクールに目がいってしまうと思います。もっと入りやすい高校ですよ、ということを具体的にPRする必要があるのではないでしょうか。
大川 生徒の質も昔とは変わってきているのも問題です。何でも自主的にやるというのが山吹の特徴でもあるんですが、最近は自分の時間割も作れない生徒が増えてきています。結果的にこれが退学者数の多さにつながっていると思います。
廣田 私たちが在学していたころは、その自主性が自慢できるところだったんですが……。ほかの高校に通う友だちに聞くと、受験に関係ない科目を受けることが多く、苦痛だという話をよく耳にしました。でも私たちはどの先生のどの授業を聞けば、受験にも効率がいいというのがわかっていたので、とてもいい高校なんだ、と再認識したものです。
大川 その受験でいうと、現在でも約7割が大学・短大への進学を希望しています。昔は受験に向け、自分で教科を選んで時間割を作っていたんです。ところが今はそれもできないから結果的に合格率も低い。
杉浦 それだけ進学希望者が多い状況でしたら、進学重視という面を打ち出す必要はありそうですね。
大川 そうなんです。だから進学校を回って、そこでドロップアウトしたような生徒に再チャレンジの場として活用してもらうというのも一つの手かもしれないと思っています。
杉浦 再チャレンジできるという特徴は、建学の精神そのものだと思いますが、中退者が一番出やすい1年次の転編入が認められていないのは残念です。1年生で転編入の募集を行い、偏差値の高い子が入ってきて進学実績が上がれば、打開第になり得ると思います。
本来の山吹の良さ活かした指導を
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山吹は生徒も教員も転換期に来ている大川 生徒の側の問題をいうと、最近は生徒同士のコミュニケーションがうまくとれていないですね。もともと授業は決まったクラスで受けるわけでなく流動的なので、友達を作りにくいという実態はあるんですが。 |
「楽校」 。楽しく学ぶことのできる学校としてチャレンジスクールの第一号として9年前にスタートした都立桐ヶ丘高校。多部 (3部) 定時制、単位制、総合学科という仕組みに加えて、不登校を経験した生徒を受け入れ、元気にさせる工夫が随所にみられる。10年の節目を前に、その現状と展望を中川恵校長に聞いた。
75%が小中学校時代に不登校を経験-学校の雰囲気はどんなものでしょうか。定時制といっても全日制と違いはないと思います。以前は夜間に授業をする定時制が中心でしたが、都立では新宿山吹高校ができてから、昼間定時制も開校しています。学校の雰囲気としては静かな学校だと思います。 -生徒の出席率は。平均してみると、6割弱ですね。学則では一応在籍年数は6年までとしていますので、6年経っても卒業単位がそろわない生徒については、退学ということになります。 |
-その静かな雰囲気というのは、不登校の生徒を多く受け入れているからでしょうか。そうですね。約75%が小中学校時代に不登校経験者です。ですから、全体的には物静かな感じの子が多いですね。1学年の定員が150人で、男女比は110対30くらいです。残り定員枠10人は9月募集枠です。 -ほかのチャレンジスクールよりも、辞める生徒は少ないように見えますが。それは、6年目で辞める数が多いということだと思います。途中で辞めないけれども、そのまま在籍の最長年限までいて、そこで退学、または転学ということになる生徒がいるということです。この点は、当校でも課題だとは思っているのです。ちなみに、卒業率は約7割前後を推移しています。 |
15人単位で 「ホーム」 と呼んでいます。それを担任一人が見るというような形でやっています。全員対象の行事は、1泊2日のアットホームキャンプと3年次の研修旅行です。キャンプは入学直後で9割くらいの生徒が参加しますが、研修旅行はやはり少ないですね。
あまり当てないで欲しいとか、答えるのが嫌だとか、そういう生徒もいます。でも当てないのが本当にいいのかどうか、私には疑問です。社会に出たら、ハードルを越えなければいけないことがあるし、壁にもぶち当たります。つまずくところを見ていられなくて石をどけてあげたら、チャレンジスクールの役割を果たせないのではないかなと思います。
-進学へのアプローチはどのようにされているのですか。進路指導は非常に熱心です。総合学科ですから、キャリア教育の観点で入学当初から積極的に取り組んでいます。卒業後の進路としては、大学、短大への進学希望が多いです。今のところは、指定校推薦とAO入試がほとんどです。
卒業生の進路についての改善を考えています。
昨年度の卒業生は94人ですが、就職が8人、あとは大学と専門学校への進学などで、残りは「その他」で40数%です。その他というのは進路未決定の状態で卒業している状態です。今までもキャリア教育は積極的に取り組んでいたのですが、出口での結果をきちんと示せるようにしたい。そのためにはやはり生徒が元気じゃないといけないと思っていますから、生徒の学校生活の活性化ということを考えています。その二つがこれからしはらくのテーマではないかと思います。
当校も入試倍率が7倍とか8倍の頃はプラスの選択ができる生徒が入っていました。これをやりたいという気持ちを持った生徒です。それが2倍くらいになった今は、やはりどちらかというと負の選択ですね。これもやりたくない、あれもやりたくない。今までは不登校だったけど、この学校だから来られるようになった、そういう生徒が増えてこないと、チャレンジスクールも存在意義を問われることになると思います。